覚悟
以前、森で迷った時の話です。
夜を森で過ごして次の日
今日は何とか家に帰りたいと
陽が昇るのと同時に動き出しました。
前日は沢を下って失敗したので
尾根を歩く事に決めました。
尾根は人の手で杭や標識が打たれていたり
少し安心が出来る所でした。
時計も携帯も持つ癖が無かった私は
持っていたコンパスと
役に立たない地図を片手に歩き始めました。
(既に私が居る場所の地図では無かったのです)
こちらへ行こうと決めて
しばらく歩いていると
途中で見た標識の所まで戻って来ました。
「ああ、同じ所だ」
山の道は真っ直ぐに見えても曲がっていきます。
今度は違う道を行こうと少し方向を変えました。
そしてしばらく歩くと
また同じ標識の所まで戻って来ました。
「また同じ所だ!」
降っていた雨は止んで
薄く陽が射していて昼下がりのようでした。
この尾根を歩いていては帰れません。
戻ろうにも戻れず、
進もうにも道を知らず、
自分で道を逸れるしか方法はありませんでした。
南下しよう、と決めて
コンパスとにらめっこしつつ歩き始めました。
目の前に谷もあるしその先は尾根です。
自分の持てる感覚に頼るしかありませんでした。
左手に沢の音がして喉が渇いていたので
そちらへ降りて喉を潤す事にしました。
沢の水を飲んで少し元気になって
緩やかな歩きやすい場所だったので
そこを南下する事にしました。
この自分の気持ちに添った決断が良かったのか
下って行くと幸運にもある施設に辿り着き、
そこで心の温かい方の力を借りて
無事に家に帰る事が出来ました。
自分の道を進む時
時に方向転換する必要があり
自分の直観をただただ信じて
進んで行くしかない時があります。
自分の想いで
自分の手が創っていく道に
心を動かせて進んでいくこと、
それ自体にきっと生きる醍醐味があります。
そしてそれらの道は全て自分の想い次第で
楽しい話にもどんな話にも変わっていきます。
絶対に変わらないと想っていたことも
自分の想い一つ、覚悟一つで
姿を変える時がやって来るようです。
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